2024年12月27日金曜日

LAMJコース12月の学習内容

LAMJ-B

いちばん守りたい伝統工芸は?:テキストとしている朝日中高生新聞に伝統工芸の記事が載っていたことから考えてもらったのが「あなたがいちばん守りたい伝統工芸は?」。生徒が選んできたのは群馬高崎だるま、越中福岡の菅笠。それを選んだ理由は何?なぜその理由になるの?外国の人に魅力を伝えるとしたらどんな動画を作る?特にどの国の人に見てほしい?など、いろいろな観点からディスカッションしました。理由をなるべくたくさん考える、理由の理由を考える、相手を意識して発信を準備する—どれも、今年度のLAMJ-Bで力を入れてきたことです。講師に何を訊かれても自分ならではの意見を堂々と発信できるようになりました。考える力を磨くことで自分の視点に自信を持てる。本当に、本当にすごいことです。

 

谷川俊太郎さんと「言葉」について考える: 先月亡くなられた詩人・谷川俊太郎さんの「言葉の意味は辞書を引けばわかる。でも、喧嘩したり、人を好きになったりした時に出てくる言葉はきっと、辞書では定義できない」(朝日中高生新聞より)についてディスカッションしました。すごく好きと思った時や怒った時に出てくる言葉にあなたはどんな意味・気持ちをこめていたのかな一人ひとり具体的に考え、説明してもらいました。そしてたどり着いた答えは「自分が喧嘩した時に使った言葉の意味は、辞書に全て書いてあるわけじゃない」。言葉の意味は文脈が決めるという大事なことを、理屈ではなく、生徒たちが自分事として自分の力で解き明かした瞬間。感動しました。

 

今月扱ったテーマ:偉人の言葉の背景・根拠を考える(マリー・キュリー、野口英世、ディオゲネス、ナイチンゲール)、外国人に日本の伝統工芸の魅力を動画で伝えるとしたら(相手を意識して「伝える」を意識する)、谷川俊太郎の「言葉」について考える(言葉とは何か、言葉の力と限界を考える)、クマは「有害」なのか(クマの気持ちになって昨今のクマ捕獲のニュースを考える)、森のクマさんの日記(クリエイティブ思考)



LAMJ-A


翻訳とは(谷川俊太郎さんを悼む): 今月は、先ごろ亡くなられた詩人・谷川俊太郎さんの詩をご本人の朗読で聴き、彼の言葉に対する態度に触れるところから始めました。翻訳も多く手がけた谷川さん。漫画『ピーナッツ』の原文と谷川訳を比較して「なぜ谷川さんは最終的にこの言葉・表現を選んだのか」をディスカッションし、「翻訳とは何か」を考えてもらいました。生徒たちの答えを一部抜粋します。「翻訳とは、自己表現」「訳した人によって訳し方が変わるので、その人の言葉の使い方とかちょっと極端に言うと、その人自体が現れるもの」「自分の言葉と原作者の直訳の2パターンで読者に自分の意見を持たせること」「正しく訳せるが、人の感情がこもりにくいもの」。生徒たちの言葉への意識の高まりは本当にすごいです。言葉を自分の味方にすること。世界のエリートたちが必死に模索していることです。

 

江國香織『南ヶ原団地A号棟』とAI小説を比較、AIの文章を「もっと江國風」に書き換える:今月後半のLA (Language Arts)では、a. 江國香織作『南ヶ原団地A号棟』と、b. ChatGPT (AI) が書いた「『南ヶ原団地A号棟』風小説」を比較しました。『南ヶ原団地A号棟』は3人の小学4年生が書いた作文という体裁になっているのですが、生徒たちには片方がA I小説だとは言わずにab両方を読んでもらい、どちらが好きか、同じ点と違う点は何か、ディスカッションしてもらいました。そして江國香織の構成・技術を分析、その分析内容に沿ってAIによる小説を「もっと江國香織風」に書き換え、「AIの小説と人間の小説の違いとは何か」を考えてもらいました。AI小説の方が「内容が頭にスッと入ってくる」という意見もあり、純然たる「情報伝達」であればAIの方がいいのかという問題も浮上。AIとどう共存するかは今世紀の最難題です。これからもLAMJだからこそできるディスカッションを通してAI問題に向き合い、新しい時代の生きる力としてもらうべく指導してまいります。

 

今月扱ったテーマ:闇バイトについて小6にスピーチをしたら(「話す」と「書く」の違いを意識する)、谷川俊太郎さんの『ピーナッツ』の漫画の翻訳に見る、翻訳とは何か(直訳と意訳の違い・翻訳とは何が大事か考える)、日本の伝統工芸(特に残したいものは何か、その魅力を誰に伝えたいか、どう伝えればいいか)、女人禁制から「男女平等」を考える(ジェンダー問題)、アンコンシャスバイアスは「良いものだ」と主張するとしたら(自分の意見に反論する)、AI小説とプロの作家による小説を比較・分析 (AIと言葉について考える)、プロの作家の技術に即してAI小説を書き換える (Language Arts)

2024年11月29日金曜日

LAMJコース11月の学習内容

LAMJ-B

 

偉人たちの名言の「根拠」: テキストとしている朝日中高生新聞に「10代に贈る 偉人の言葉」という連載コラムがあります。世に言う名言は、結論部分だけがひとり歩きして背景や根拠はごそっと抜け落ちていることも多いもの。そこで「この偉人の名言の『根拠』は何?」と偉人の気持ちになって根拠・背景を考えるというルーティーンを始めました。多様な視点を持つ力、論理力、想像力を鍛えます(偉人たちについて学べるという強烈なオマケ付き!)。今月はダリ、坂本龍馬、ゲーテになりきって考えました。

 

地動説・天動説再び:地動説が生まれた時代を描く『チ。』(作・魚豊)というマンガが朝日中高生新聞で紹介されていたことから、9月に学んだ天動説・地動説を別の切り口で考えました。「何事も相対的である」と言うのは簡単ですが、それを自分事として捉えるのは大人でも難しいです。生徒たちには、誰かの身長が「高い」などということが相対的な概念であることをわかってもらった上で、「『Aだ』と信じていたけどあるとき『いや、Aじゃないかも…』と思ったことってない?」と考えてもらいました。何をきっかけにものの見方は変わるのか。これからも考えていきたいです。

 

今月扱ったテーマ:事実をもとにお話を作る(クリエイティブ思考)、聴衆の特性を意識して1分スピーチ(プレゼンのスキル)、偉人の名言の根拠を考える(多様な視点、論理力、想像力)、緊張するのはどんな時?緊張は悪いこと?(メタ認知)、回転寿司を千円で応援するとしたら(未来思考、クリエイティブ思考)、天動説vs地動説から考える「見え方の変わる時」(比較する力、メタ認知)



 LAMJ-A

 

「あり得ない仕事」を「スバラシイ仕事」に:テキストとしている朝日中高生新聞で大学入試の特集が組まれていたことから、今月はまず「今どきの入試」について高3LAMJ生に話をしてもらいました(どうもありがとう!)。話は転じ世の中がこれだけのスピードで変わっているのに、入試も仕事のあり方も今まで通りでいいの?という問いを講師が投げかけました。生徒たちには「あり得ない仕事」を挙げてもらい、そのあり得ない仕事をどうすれば「スバラシイ仕事」に変えることができるか考えてもらいました。「世界中のおいしいものをいくらでも食べられる」というあり得ない仕事も、生徒たちの手にかかるとスバラシイ仕事に早変わり。「世界中の美味しいもののを食べたら全てレビューしなければならない。『特殊な食べ物』に各地の伝統食品を組み込めば、各地の食べ物の伝統が守るという仕事にできる」。あり得ない仕事を思いつくのも早かったですが、それをスバラシイ仕事に変えるのに費やした時間は10分足らず。「考える筋」がすばらしく鍛えられています。

 

暗黙の前提:LAMJでつく力の1つに「じっくり考える力」があります。ひとつのことを一方向で考えていても「じっくり考えた」とはいえません。じっくり考えるとは、さまざまな考え方を適宜組み合わせて深掘りをしていくこと。暗黙の前提はそんな「考え方」のひとつでもあり、かなりの論理力が問われるナンブツなのですが、生徒たちほどの思考力があればもうできるはず—と満を持して今月から指導を始めました。暗黙の前提を考えられれば、相手のことも、自分のことも、もっと理解できるようになります。

 

今月扱ったテーマ:高校3年生に大学入試のリアルを聞く、「あり得ない仕事」を「スバラシイ仕事」に(クリエイティブ思考)、暗黙の前提(考えの奥底には何があるのか、思考を深める)、音声学を使って椎名林檎の歌詞を分析(阻害音・共鳴音のもたらす効果、ランゲージ・アーツ)

 

2024年11月2日土曜日

LAMJコース10月の学習内容

LAMJ-B


ベルリンの壁を推理する:目の前にある、ゴツゴツした石の正体は? 正解は「ベルリンの壁の一部」。この正解に行き着くまで、生徒たちは1時間半をかけて観察し、考え、想像し、情報の点と点をつないでまた考えを繰り返しました。ベルリンの壁がまだ立ちはだかっていた頃にドイツに住んでいた講師が当時の経験を話しましたが、現代の日本に住む小学生にとってベルリンの壁はとうてい想像の及ばないことかもしれません。でも、想像がつかないからこそ必死に考える。多様性理解の根本です。

 

こども哲学「そうだね、じゃあ悪いことの中に良いことを見つける:テキストにしている朝日中高生新聞の記事にインスピレーションを得て、「こども哲学シリーズ」(朝日出版社)をクラスでやってみました。哲学のポイントは、何か答えが出たら「そうだね、じゃあ(でも)…」と異論を考えること。また、多角的思考を育てる一環として、「悪いこと」の中に「良いこと」を見つけて言語化するというトレーニングも始めました。先月から鍛えている「なんでのなんで」も「それでのそれで」も「そうだね、じゃあ」も「悪いことの中に良いことを見つける」も、全て、じっくり考えるためのポイントです。じっくり考えるというのは大人にとっても難しい作業ですが、どんなポイントをどんな時に考えればいいのかを知っていれば、考えることが得意に、好きになります。最近、生徒たちは考えることが明らかに好きになっている様子。シェアしてくれる意見は深くてユニークで面白くて最高!

 

今月扱ったテーマ:ベルリンの壁(壁の断片を観察・推理する、考えをつなげる)、早く大人になりたい?(哲学思考)、日本の投票用紙のナゾ(多角的思考、想像力を磨く)、楽しみにしていたお出かけができなくなった、苦手なテスト、友達と大ゲンカ悪いことの中に「良いこと」を見つける(多角的思考、自信を身につける)



LAMJ-A


ODAプランを石破さんにプレゼン:テキストとしている朝日中高生新聞にODAの記事があり、また次の号には石破新総理の紹介記事が載っていたことから「自分たちが望むODAプランを考えて石破さんにプレゼンする」という想定で話し合いをしました。プレゼンの準備でまずやらなければならないのは「内容を1文でまとめる」「聴衆のプロフィールを把握する」「目的は何か、見定める」。この3つをしっかり言語化するのは非常に難しく、大学生や社会人でも言葉がうまくまとめられなかったりするのですが、LAMJ生、大いに悩んでがんばって言語化に成功しました。今後のプレゼンに活かしていってほしいです。

 

セリフとナレーションの黄金比、頭韻という技巧3ヶ月にわたって向き合ってきた、中島京子『妻が椎茸だったころ』読了。今月は、セリフとナレーション(地の文)をどのように配置すれば生き生きとした文章になるのか、法則を見抜いて自分たちの文章に応用してみました。プロがさらりとやってみせる文章の技・スキルは、法則こそわかっても実践はめちゃくちゃ難しい—と気づいてくれたようです。LAMJでは表現の「音」を大事にするよう指導していますが、英語ではとかく重視される「頭韻」が『妻が椎茸だったころ』に使われていることを発見、こちらも実践してもらいました。頭韻は文章上の大事な技巧。プレゼンの原稿、作文、小論文に大いに活用してもらいたいです。

 

今月扱ったテーマ:ODA (援助したい国の調べ学習、未来思考)ODAプランを総理にプレゼンするとしたら(夏に学んだ「MAP」復習、わかりやすく、聴衆を意識して伝える)、中島京子『妻が椎茸だったころ』に学ぶ、セリフと地の文の効果的な書き方と頭韻(ランゲージ・アーツ実践)。


2024年9月29日日曜日

LAMJコース9月の学習内容

 LAMJ-Basic

 

「なんで」の「なんで」:考える力の基本中の基本は「なんで」です。たとえば、本を読んでAという感想を持つ。なんでそう思ったか、理由Bを言葉にする。じゃあ、なんでBという理由を持ったの?背景は?きっかけは?その思いはどんなどこから来ているの?—この一連の思考をLAMJ-Bでは「『なんで』の『なんで』(理由の理由)」と呼んでトレーニングしています。「『なんで』の『なんで』」はなんで素晴らしいかというと、その人のことがもっとわかるからです。「『なんで』の『なんで』」は考えることに慣れていない人には難しく感じます。自分と向き合い、深いところにある理由を言葉としてひねり出してこなければなりませんから。でも生徒たちはさすが!短い時間でも理由の理由をしっかり言葉にして伝えてくれます。最近、意見をシェアするときになんとも素敵な笑顔を見せてくれるようになりました。考えることを楽しんでいる様子。頼もしいです。
 
「それで」の「それで」: テキストとしている朝日中高生新聞に、ある中学の野球部が廃部の危機を乗り越えた話が載っていました。そこから「このAという中学には実は良きライバル校Bがあって(というのは講師の作り話)、B校の生徒たちはA校の野球部員をもっと増やすために協力したいと思っています。あなたがB校の生徒なら、何をする?」というお題を出しました。生徒たちが出してきた答えで秀逸だったのは「A校の町にたくさんの人に住んでもらうたとえば1万人とか」「B校の生徒でA校の野球部に入りたい人は、A校に転校してもらう」。このように考えるときに大事なのは「そんなことできるわけない」と決めつけないこと。そうやって自由に考えた上で「じゃあ、実際にやったら何が起きる?」と現実的に考えていく。ワイルドに、しかし現実的に未来を思考することを今後もどんどんやっていきたいと思います。

 

今月扱ったテーマ:コンテンポラリー・ダンスを見て考える(観察し、意見を持ち、発展させる)、チャドの出生率(問題の原因を考える)、イスラム教と天文学(知識の点と点を結んで線にする)、ライバルにがんばってもらうために自分ができることは?(未来思考、問題解決思考)


LAMJ-Advanced

 

リアルvsリアリズム:今月後半のLALanguage Arts、つまり「分析と議論を重ねることで辿り着ける言葉の技・スキル」)は前月に引き続き、中島京子作『妻が椎茸だったころ』(泉鏡花文学賞)を分析しました。この作品の魅力のひとつは、登場人物たちのキャラが炸裂する「リアル」なセリフ。しかし「本当にリアル」なセリフと、「リアルに思える」セリフとは違います。生徒たちはまず自分の家族のおしゃべりを分析、誰かが実際言ったことを素直に文字起こししても「リアルなセリフ」にはならないことに気づきました。読み手に「リアルだなあ」と思わせるセリフ—リアリズムなセリフ—はどんな工夫をしているのか?というディスカッションでは「他の登場人物に向けて言っているように見せかけて、実は読者に向かってメッセージを発している」「『ごめんなさい、あとで電話します』と言わせることで、この2人は普段電話でやり取りしているんだと読者にわからせる」「『お』教室、ということで、この小説のキーワードである『教室』を強調したかったのでは」など、実に鋭い指摘が出ました。そして実際に「リアリズムのセリフ」を書いてもらいました。
 
宿題とは何か: LAMJで毎週宿題を出す理由は「クラスの皆と議論するために必要な準備だから」「『宿題=約束』という捉え方を通して相手を尊重することを学んでほしいから」。これらの理由の根底には、学ぶということは「先生」「生徒」という上下関係ではなく、対等な人間同士だからこそ成り立つ、という確固たる信念があります。約束は破るためにあるんじゃない、議論するためには知識を得るなどそれなりの準備が必要である。そんなことも肌感覚でわかっていってもらいたいです。

 

今月扱ったテーマ:コンテンポラリー・ダンスを見て考える(観察し、意見を持ち、発展させる)、日本の少子化問題(様々な視点から考える)、登場人物をセリフから分析 (文章を科学的に分析する)、「リアルな肉声」と思わせるための表現スキル(ランゲージ・アーツ実践)

2024年7月30日火曜日

LAMJコース7月のレッスン内容

学習内容 7月期 LAMJ-B

パパッと考えるvsじっくり考えるトレーニングLAMJ-Bの生徒たちの中にはパパッと考えて答えを出すことが得意な人もいれば、じっくり考えることが得意な人もいます。それぞれの得意なことはさらに伸ばしながら、そこまで得意じゃないかもしれない「じっくり(あるいはパパッと)考える」を得意にするためのトレーニングを始めました。このトレーニングはノーベル賞学者の故ダニエル・カーネマンの理論とハーバード大の「考える力教育プロジェクト」を応用したものです。「じっくり」には色々な種類があります。たとえば理由をたくさん考える、理由を深掘りする、他の立場で考えるなど。今月は「理由をたくさん考える」に重点を置きました。

 

記事を読んで、ビフォー&アフター:テキストとしている朝日中高生新聞から子どもの権利の記事を取り上げ、①子どもの権利と聞いてまず何を思った?→②記事をじっくり読む→③読んでみて、子どもの権利に対する考えは変わった?という流れで考えてもらいました。新しい情報・学びを得て自分はどう成長したのか、振り返りを習慣化していきます。

 

パレスチナとイスラエルのことを小学生目線で考える:朝日中高生新聞にパレスチナとイスラエルの特集が載っていたことから調べ学習をし、記事を読んだ上で「この記事のキーワードを1つだけ選ぶとしたら?」と問いかけました。生徒たちが選んだのは「アイデンティティー」と「資格」。なぜそのキーワードを選んだのか、理由は「記事を読んだときに一番苦戦した言葉だったから」「理由が思いつきやすそうな言葉だったから」など。大人目線で考えると「パレスチナとイスラエルからかけ離れているじゃないか」というお声も聞こえてきそうです。でも、自分目線で考える、小学生目線で考えるとはまずこういうことだと思います。誰かの受け売りでも聞こえの良さそうな理由でもなく、自分の中から正直に生まれてくる言葉たち。その言葉たちにちゃんと耳を傾けることから全ては始まります。



学習内容 7月期 LAMJ-A

 

ローザ・パークス、1955年のアメリカ、現代の日本:テキストとしている朝日中高生新聞にレイシャル・プロファイリングの記事が載っていたことから、今月は黒人の権利活動家のローザ・パークスと、米・アラバマ州でかつて起きたモンゴメリー・バス・ボイコット事件を取り上げました。70年近く前にそんなひどいことがあったのかと向こう岸の火事を眺める。なんてことはLAMJではやりません。人種差別が濃厚だった1955年のアメリカと2024年の日本との共通項は何か、小6〜高3の生徒たちがディスカッションしました。

 

モンゴメリー・バス・ボイコット事件を、淡い恋心のおばあちゃんに伝える: 若い頃、日本に少しだけ住んでいたアラバマ出身の白人男性「ボブ」のことを密かに思慕していた、現在90歳の日本のおばあちゃん(仮の設定です)。そんなおばあちゃんにモンゴメリー・バス・ボイコット事件について伝えるとしたら…? という宿題への皆の答え方がすごかったです。「おばあちゃんがボブを素敵だと思うのは否定しないんだけど、モンゴメリー・バス・ボイコット事件っていう事件が昔あって、それを知ってほしいから」と語り出す生徒、「おばあちゃんあのね、おばあちゃんは嬉しくないかもしれないけどね」で始める生徒、白人との思い出があるなら黒人vs白人ということを言わなくてもいい、知らせなくていいと思った、という生徒、ボブと「白人」全体をなるべく離すようにしたと話す生徒相手のことをしっかり考えて尊重して伝える姿に涙が出ました。伝える力がますます伸びています。

 

文学賞受賞の小説の「読ませる」秘密を解き明かして応用:今月後半のLALanguage Arts—分析と議論を重ねることで辿り着ける言葉の技術のこと)では中島京子作『妻が椎茸だったころ』(泉鏡花文学賞)の前半を精読、分析しました。冒頭の1段落が「読ませる」のはなぜか、話し合ってもらったところ、「1文目比較的短い文による事実、2文目比較的長い文による記憶、3文目比較的短い文による事実、4文目比較的長い文による記憶」というサイクルになっているのでは、という意見が...素晴らしい着眼点と分析力です。このサイクルを使って自分たちの文章を書き換えてもらったところ、リズムとメリハリのある、なんともユニークな文章が誕生しました。自分の視点を信じて分析・意見できる力に圧倒されます。皆どんどん力を伸ばしますし、話し合うことで何かを創り出す喜びを感じてくれているのだと思います。


2024年6月29日土曜日

LAMJコース6月のレッスン内容

LAMJ-B

Show & Tell(見せてお話し)LAMJ-B、今月の一大のプロジェクトは「Show & Tell(見せてお話し)」でした。Show & Tellはアメリカの小学校などではお馴染みの、自分のお気に入りを持参してそのモノに対する想いを大いに語るプレゼンテーション。何を見せたいのか、聴衆は何を聞きたいと思うのか、なぜそれがお気に入りなのか、いちばんの思い出をセリフ入りで語るとしたら—大注目の「ストーリー・テリング」の手法もまじえ、丁寧に準備を重ねました。そして迎えた発表当日。本当に素晴らしい発表でした。一人ひとりの個性がしっかりと伝わってくる、その人にしかできない語りに心が震えました。準備もしっかりやって、オンラインならではのアイコンタクトにも挑戦して。本当に素敵でした。お疲れさまでした。

 

「 」の効能Show & Tellをするにあたり、人の「セリフ」に注目しました。テキストとしている朝日中高生新聞には毎回たくさんの「 」(カギカッコ)が登場しますが、「 」がついている=誰かのセリフ とは限りません。「 」の役割とは?人が言ったことじゃないのになぜ「 」がついてるの?ディスカッションしました。

 

難しい言葉を小1に説明:朝日中高生新聞に毎回登場する難しい言葉たち。主体的に読んでもらうため、そして語彙を増やしてもらうために、難しい言葉は「小1に説明して」といつも言っています。今月は小6の生徒たちに「肩書」「表舞台で持ち上げられる」「難民」などを説明してもらいました。辞書は良いものをしっかり引くこと、文脈をしっかり理解してこそ言葉の意味が決まることをだんだん理解できるようになってきました。



LAMJ-A

インクルーシブとは、「普通」とは:テキストとしている朝日中高生新聞にインクルーシブの特集があったことを受け、今月の前半はインクルーシブと「普通」について様々な角度からディスカッションしました。「インクルーシブを小1に説明するとしたら」という問いに始まり、障がいがある人を「普通」に寄せることの是非、「普通」の定義、ネルソン・マンデラが謳った「虹の国」と「インクルーシブな国」は同じなのか違うのか—たくさんのディスカッションを経てインクルーシブの意義を深掘りしました。

 

詩を好きになる:今月後半のLALanguage Arts—分析と議論を重ねることで辿り着ける言葉の技術のこと)では米津玄師の『灰色と青』の歌詞を取り上げました。詩を普通の文に書き直してみる、わかるわからないは別にして気になる表現を探してみる、登場人物の年齢を探偵よろしく推理してみる、詩に使われている言葉を他の言葉に置き換えてみる—色々チャレンジしました。詩が苦手という人は多いです。チャレンジと話し合いを通して、詩は「わかる」以前にそれぞれの感覚と根拠で「味わう」もの、と気づいてくれたでしょうか。

 

米津玄師の言葉の技術を盗む:『灰色と青』の歌詞には実におもしろい表現がたくさんあります。生徒たちは毎月提出する「LAノート」に気になった表現をリストアップし、なぜその表現が好きなのか、他の言葉に変換すると印象はどう変わるのか、それぞれの言葉の音の響きはどうか考え、実践しました。日本の「国語」では言葉の意味を云々することがもっぱらで、一つひとつの言葉が持つ「音」「風合い」に注意を向けることは稀です。どの文化の言葉もまずは「話す」「聞く」から生まれました。意味だけでなく「響き」を意識することには大きな意義があります。今後生徒たちが学校などで書く作文には米津節だけでなく、これまでLAで扱った赤川次郎・江國香織両氏の、響きの効果も考えた「プロの言葉の技術」が煌めくことになると思います。

LAMJコース12月の学習内容

LAMJ-B いちばん守りたい伝統工芸は? :テキストとしている朝日中高生新聞に伝統工芸の記事が載っていたことから考えてもらったのが「あなたがいちばん守りたい伝統工芸は?」。生徒が選んできたのは 群馬高崎だるま、越中福岡の菅笠。それを選んだ理由は何?なぜその理由になるの?外国の人...